6/15(水)17:45から一時間ほど、気候変動問題に取り組む日本の若者団体の代表者が山口壯環境大臣との意見交換会に参加しました。本ブログでは意見交換会に参加したCYJのメンバー4名の質問とそれらへの山口大臣の回答、またそれらを受けてCYJメンバーが感じたことについて書いています。
質問1
少しCOP26を振り返りたいのですが、日本はグラスゴーで気候変動解決に向けたあらゆる政策の発表や貢献をしました。例えば、NDC、途上国へ追加支援の表明、6条ルール市場メカニズムに関する交渉のリードなどです。しかし、国際的な評価は決して高くはなく、先日のG7気候エネルギー担当閣僚会合でも孤立気味だと思います。我々も海外の若者から努力不足と言われ、歯がゆいわけです。
そこで質問なのですがCOP27において、日本のエネルギー事情を踏まえた最大限の努力を国内外に正確に理解してもらうために環境省或いは環境大臣としてできることは何だとお考えですか?CYJとしてはCOP27現地で外国プレス向けに会見を行うというのが提案になり、またゆくゆくはCOPの日本誘致も見据えていただきたいと思っています。
回答1
ありがとうございます。歯がゆい思いをさせてすみません。他方、ここ半年見ていただいたら、地域脱炭素移行再エネ推進交付金という、地域の脱炭素と町おこしの両立など、COP26 で決まったことをどうやって実現していくかがいま問われている。各国とも、1.5 度の共通目標をどうやって実現するんだと、石炭だけでなく、全部について。そういう意味では地域脱炭素移行再エネ推進交付金はそこから始まっている。この秋には脱炭素化支援機構も始まる。それぞれが 200 億から始まる。道具立ての中で、日本で7つある地方環境事務所を 10 人ずつ増員し、地域に根差した地域の脱炭素をやっていきます。理屈じゃなくて行動のみ。そういう中で、日本はそうとう道具立てが整ってきたと思う。クリーンエネルギー戦略に関する有識者懇談会では、岸田総理との懇談の中で、10 年間で 150 兆、脱炭素と経済成長の両立のために。私からは 2050 年までに 400 兆、あるいはそれ以上。脱炭素国債20 兆円、ここから始める。半年間で急速に進んでいるが、各国はここまで来ていない。必ず形に直して必ずやるということで、国会でも地球温暖化対策推進法の改正案ということで、脱炭素先行地域とか、脱炭素化支援機構といった取り組みをやっている。
そういう中で一番歯がゆく思っているのは石炭でしょう。他方石炭無しでどうやって行くのか、ちょっと僕は難しいと思う。明日なくすわけにはいかない。アンモニアの混焼ということでも僕は不十分かと思います。どういう風に、じゃあ石炭なくして原子力と言えば慎重な意見があると思います。ウクライナとロシアの戦争を受けて、脱ロシア。日本はロシアに資源を頼っているが全部ゼロにしたい。経済制裁したって、エネルギーでお金を払ってたら戦争は続いちゃうわけですよ。だからそれをなくすためには脱ロシア、というために自前の国産のエネルギー、特に再エネ。総理から原発という話も出ているが、環境相は再エネの方ですから、そういうことを具体的に進めていくというのが僕の中でやってるところ。石炭の話については、ドイツなんかも、石炭なくすと言いながら今どうしてもどーんと増やしている。そこを我々は問うていない。でもそれは気持ちはわかるから、ウクライナが攻められ、今困っている中でなくすのは酷でしょう。G7はドイツ主催だったが、そこはお互いがうまく長期的に。我々も 2050年にゼロにしてアンモニア専焼にすることははっきりしているし、それも実は実験段階に進んでいる。なかなか歯がゆい思いをさせているのも、私もよくわかっているつもりですが、私の方でも努力します。エネルギーの安定供給を確保しながら、そこの石炭についても、アンモニアの混焼によって実際のところを減らすことができるのかを、やらないといけないと思っている。日本に COP、なるほどなと、京都でやったときもありましたが、これからこの環境問題が、世界の新しい秩序を作るに際して大きな部分だから、日本も環境を通じて平和を作るということを含めて、日本でやる意味は大きいと思う。きっちり受け止めさせてください。 (全文)
感想や課題観1
大臣からは現状進んでいる脱炭素政策についてや、平和とエネルギー・環境問題の関わりについて、COPの日本誘致など多様なトピックについて言及していただいた。その中で地域脱炭素移行再エネ推進交付金や脱炭素化支援機構、クリーンエネルギー戦略、温対法の改正などの具体的行動により、COP26 での合意を実現すべく様々な道具立てが進んでいるというお話があった。そんなことは知っているし、その努力や、日本にとって最善最適の手段を模索することの大切さも重々承知しているつもりだ。私たちCYJから大臣へさせていただいた問いの本質には、その努力を、如何に国内外に正確に発信し、理解を求め、脱炭素が絡むあらゆる政策・市場で日本が世界から遅れを取らないようにするかということがあった。そういう意味では我々の真意が正確に伝わらなかったことは我々の力不足であり大いに反省すべき点である。しかし、ここにはもう一つ留意すべき点があるように思う。それは我々が”はがゆい”と表現した日本の国際的な孤立への懸念を、一般的に「若者」が”はがゆい”と感じているとされる石炭利用継続への懸念と捉えられてしまったことである。これは社会に「若者」への強いステレオタイプが働いていることを明確に示している。本来多様であるはずの若者の意見が多様性を失っている現状は大いに危惧すべきである。日本の若者はより積極的に多様な価値観を以て自身の論を展開し、さらにそれらについて世代を超えて議論を行うことが大切であることを強く感じた。(文責:古賀)
質問2
気候変動問題について、昨今、多くのセクターからの取り組みが進んでおりこの動きをどう活性化させて、止めずに盛り上げていくか課題になると思うが、その中で気候変動そのもののリスクについてどのように発信していこうと思っているかお聞きしたい。気候変動問題の科学的不確実性について、いまだ不確実性が高い部分があると考えている。リスク問題として、気候変動問題をどのようにとらえて、伝えていくべきか大臣の意見を聞きたい。また、今回集まった若者は代表に過ぎない。今後日本の将来、未来を作る世代を、どうやって今の気候変動問題の中での政策決定の場に、直接的な決定ではないとしても、それに参画し、関心を持たせるかについて、しっかり取り組みを進めてほしいと思う。
回答2
客観的情報を発信することが大事だと思う。勝手に言ってるんではないよと、権威の人たちが言っておられるんだという形で発信している。たぶん小林さんなんかが見られたら、それじゃあ客観的過ぎて難しい、気持ちを込めて主観的に言ってくれということだと思うし、私たちもその気持ちを共有しているつもりだ。また若い世代の政策形成への参画について、大事な部分だと思う。昔は環境というものの日本全体での重要度は低かったように思う。しかし、環境に関するアージェンシーというか、切迫感が共有しつつあるような気がする。いろんな業界でもやらなきゃいけないというのは共有してもらってはいる。若い世代の声がそこに入っていっているかというところについては、なかなか満点の答えはないと思うので、できるだけ声を聞かせていただければと思っている。(要約)
感想や課題観2
客観的情報を発信し続けることだけでは、政治における「不完全な中で決断を下す」という責任を見えにくくしていると感じた。リスク情報の取り扱いについては、懐疑論の問題ともつながる重要な論点でもあるため、方針策定を急いでほしい。また、若者の参画については制度設計だけでなく、将来世代の声を取り入れて話し合うべき課題であるという認識をいかに広げるかが問題となると考えている。今後、省庁を挙げた取り組みが進むことに期待したい。(文責:小林)
質問3
省庁として気候危機に対し様々な取り組みをされていながら、諸外国と比べ取り組みが遅れていると捉えられることもあるかと思います。そんな中で、山口大臣は、環境に関する国際会議において、日本が国際社会に貢献する、という形で存在感を出すために、何を重視すべきだとお考えですか。
回答3
日本の取り組みが私遅れているとは必ずしも思わないが、歯がゆい思いをさせているのはよくわかる。では日本ができることは何なのか、国内外両方ありますよね。地域脱炭素移行再エネ推進交付金とか、脱炭素化支援機構、これは国内のこと。地域の脱炭素と町おこしが両立する、だからお願いしますということで。この間脱炭素先行地域ということで26地域をまず選ばせていただいた。秋にはもう一度やりますからということで7/26―8/26まで募集するんですけど。2025年までに100か所選ぼうとしているんですが、足りないんです。全部で地方自治体は1741ありますから、100では足りないんです。国内ではそういう核でやっていきますが、もう一つ日本ができるのは国外、ジョイントクレジティングメカニズムという日本の仕組みを使いながら、日本の脱炭素技術ものをどうやって国外と共有していくことができるか、それが日本が世界に対する貢献の一つですよね。日本がやってることは、これやったから全部解決だということではありません。日本だけでできることではありませんからね。環境問題に国境なしという言い方を時々にしますけど、日本だけでCO2減らすことはできません、全部の国で。一番出してるのは中国その次アメリカ、全ての国がやらなきゃいけない中で、日本が率先してみんなの面倒を見させてくださいと。日本はジョイントクレジティングメカニズムで17のパートナーがいます。この間岸田総理がインドに行かれて18番目にならないかなということで今協議をしています。30くらいにいきなりして、途上国に日本の脱炭素の技術を共有させてもらえないかということでやっています。グラスゴーでパリ協定6条の市場メカニズムについての合意が整ったということで、拍車がかかるポイントですよね。国内でもちろん頑張ると同時に国外ではJCMの仕組みを通して、脱炭素技術の共有を進めていきます、ということですね。(全文)
感想や課題観3
山口大臣から「環境問題に国境なし」の言葉であったり、「新しい秩序」「世界平和」を含意した発言が見られたのは、日本が国際社会において孤立するのではなく、協力して気候変動に取り組んでいくという思いを共有していただけたという意味でよかったと思う。
質問内容として「環境における国際会議において、日本が国際社会に貢献するという形で存在感を出すには」と尋ねたように、国際会議における日本の役割についての意見を拝聴したかったのだが、国内外に向けた取り組みについての紹介をしていただく形になってしまった。国際会議、特に先進国との協議の中では日本は欧米との姿勢に違いがある中で、どのように国際社会に貢献していこうと思っているのか、政策だけでは見られない部分に迫ることができなかった。(文責:高尾)
質問4
我々としては気候変動問題ももちろんのこと、容認非容認の是非はともかくとして、原子力発電について国民的な議論が必要であるように考えています。私もCOP26の現地に訪問して、海外の若者と交流する中で、日本人としてやはり原子力発電をどのように考えているのか、ストレートに意見を聞かれたこともありました。ですが、国内に目を向けますと、一部地域ではやはり住民側と操業側の間で裁判や議論が行われていたりしますが、一方で全国に目を向けるとまだまだ国民の関心が不足しているように思います。ですので、全国民が自分事として原子力発電を考えて、これから活発に議論していくためには、環境大臣としてはどういったことが重要になるとお考えでしょうか。
回答4
すごく大事なポイントです。岸田総理はロシアのウクライナ侵略ということも全部受け止めながら、これから自前の国産のエネルギーシステムという中で再生可能エネルギーということも、プラス原発ということも言ってるわけですけれども、原発についてはとにかく安全が最優先です。まず一つ、3.11以降を受けて、原子力規制委員会そのものと新しい基準を整え直し、環境省としてもその基準に沿って判断をしています。
他方もう一つは、同時に再生可能エネルギーを最大限導入する中で、結果的に原発の比率が下がっていくようにしていきたいというのが環境省的な立場です。政府全体としては、去年の10月に閣議決定したエネルギーの構成っていうものが、再生可能エネルギーは18%から36-38%に倍増、原子力については6%から27-22%にもっていく、石炭については32%から19%に落としていく、それから天然ガスについても落としていくということです。しかし再生可能エネルギーをイノベーションにより進めていければ、結果的には比率は落ちていくのではないかと思います。
だが、それも諸外国の流れに比べると、日本は福島のことを考えるともちろん慎重です。ですからそういう数字が27-22という数字があってもまだ、相当慎重に、安全を最優先ということで考えてます。ただ、もう少しきちっとした議論が必要じゃないかというのが仰りたいことだと思うんだけど、そこは確かにまだできてないかもしれません。これから2050年カーボンニュートラルを実現しようと思ったときに、原子力っていうものがゼロってことではなってないということですよね。6-22にってことなんだけど、これをどういう風に考えるのかっていうところを今おっしゃった、そこは環境省の主なところは再生可能エネルギー、原発についてはは安全最優先、というところで少し止まってて。国民的議論としてはもう少し議論しないといけないというのはその通りだと思います。(一部要約)
感想や課題観4
当初、我々の質問の意図としては、原子力発電に対する容認・非容認の是非に関わらないという中立的立場のもと、全国民が原子力に関心をもちこれからの在り方を議論していくにはどのような点を重視すれば良いかという、ある種のミクロな課題に焦点を当てたものであった。しかしながら、そうしたニュアンスを端的に伝えることが叶わず、結果的に大臣からは政策的なお話をしていただいた。個人的な課題でもあるが、限られた時間内に的確に伝えることの難しさを痛感し、今後の課題としていきたい。原子力発電は脱炭素社会の実現のための一手法かもしれないが、福島第一原発事故を経験し安全神話の不確実性を身に染みて実感した日本は、いっそう科学技術の利便性と危険性の両面を慎重に見極める必要があると考える。(文責:高野)
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