11月25日、日本のエネルギー問題と放射性廃棄物の地層処分に関するオンライン勉強会が実施されました。一般向けにも開催し、20名を超える方に参加いただきました。 地層処分とは、原子力発電により生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分方法のひとつで、その名から推測される通り、地下深くに埋めることによって外界から隔離し処理する方法です。 この度は弊団体の平澤のほかCYJ外からも数名の講師の方をお招きして、エネルギー分野についてあまり知らない人にも理解しやすいよう、基礎的な知識と現状についてご教示いただきました。
〜以下の組織に共催いただききました〜 ・資源エネルギー庁 ・原子力発電環境整備機構(NUMO) ・電源地域振興センター ・日本原子力文化財団
まず最初はエネルギーを取り巻く世界の実情と日本のエネルギー政策について、資源エネルギー庁から発表いただきました。日本の主力エネルギーは戦後から高度成長期にかけて、水力から石炭、石油へと移り変わりました。その後は、第二次石油危機の影響を受けて脱石油化が進み原子力などの開発が進む傍ら、比較的安価で供給安定性のある石炭の利便性が再度見出されました。しかしながら1900~2000年代以降、地球温暖化対策が重視されて来たことにより、現在、世界は全ての化石エネルギーからの脱却を図る脱炭素へと舵をきっています。
参照:オンライン勉強会, 資源エネルギー庁, p19
今後はエネルギー基本計画に基づき、3E+S(自給率、経済効率性、温室効果ガス排出量+安全性)の観点から、主に電源に占める原子力および再生可能エネルギー割合の拡大により、バランスの取れた電源構成(エネルギーミックス)を目指し、省エネを推進すべきであるとされています。 また前提として、日本のエネルギー自給率が他の先進国に比べてかなり低いことは有名です。小資源国の日本は発電に必要な資源の多くを海外からの輸入に頼っていますが、これは安定供給性において良い傾向とは言い難いでしょう。なぜなら、海外の政治情勢や資源の価格自体が不安定であるからです。ホルムズ海峡付近でのタンカー襲撃事件は記憶に新しいのではないでしょうか。 このようなリスクを踏まえ、少数の電源に依存しないことは重要で、安定供給性とエネルギー自給率に貢献しうることがわかりました。
さて、今回のメイン要素である地層処分に関しては、原子力発電環境整備機構(NUMO)からレクチャーいただきました。 一部の国の原子力発電では一度使った核燃料を処理し、再利用する取り組み「再処理」が行われています、日本も資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減などの観点から採用しています。ですが再処理が行われた後の高レベル放射性廃棄物は、いずれは廃棄されます。この最終処分のための方法の一つが、地層の「物を閉じ込める性質」を利用した地層処分です。現状、地層処分は他の海洋投入やロケットでの打ち上げによる処分などの手法よりも安全性が高いとされ、複数の国々で採用が検討されています。
参照:地層処分ってなんだろう?, NUMO, p12
具体的には、高レベル放射性廃棄物をガラス、鋼鉄、粘土の順で覆っていき、地下300mより深い場所に埋めることで処理されます。 日本での地層処分をめぐる議論の一つとしては、実際に処分を行う「場所」をどこにするか、という問題があります。場所の候補地は様々な調査を通して選定されますが、実際の事業施工には当該地域の自治体と住民の理解・合意が求められるわけです。 しかしながら現状、地層処分事業は国民に対していったいどれほど認知されているのでしょうか。まだ候補地は選定段階ですが、日本のこれからのエネルギーの一翼を担う原子力発電に対しても地層処分に対しても、国民全てが知る機会を持つべきであると感じました。
また、弊団体の平澤からは独自で参加した今年の9月上旬に開催されたスウェーデン、フィンランドの地層処分視察について、報告がありました。この二国では現在安全審査および建設が進んでおり、他国の進捗状況に比べて地層処分先進地であるといえます。 フィンランドは最終処分地であるオルキルオトのビジターセンターやエウラヨキ自治体、市内の中学校などを視察しました。ここで衝撃を受けたのは、長い間透明性の高い情報開示が徹底されてきたことで、住民が原子力を操業する企業に対し信頼を持っていたことです。また、中学校では講義+ディスカッション形式の自分で考える主体性が必要とされる授業が行われており、こうした環境下で選挙への高い投票率からも見て取れるような各々の政治参加への積極性が育てられるのだと感じました。
参照:地層処分勉強会資料, CYJ, p17
スウェーデンでは低中レベル放射性廃棄物処分場などを視察しましたが、ここでも地層処分が一大環境プロジェクトとして地域に受け入れられ、これに取り組むことの重要性が広く浸透していました。この二国では過去に大きな原子力関連事故がなかったことも、地層処分が進んでいる要因なのではないでしょうか。 日本では原発事故を背景に原発に対するイメージは依然悪く、自然災害のリスクを考慮した上で地層処分の適切性が問われる場面もあります。これら先進地から学ぶべきことは、地層処分事業は住民・自治体と操業企業間の信頼関係の上に成り立つということであると考えられます。したがって、日本で地層処分を進めるには、何万年という規模の事柄だからこそ、メリットとデメリットを多くの国民が把握しオープネスを大切に問題と向き合うこと、また原発と地層処分を別個に捉えることが今後、重要視されるべきであると述べられていました。
勉強会を通じて、私自身エネルギーや地層処分によりいっそう理解を深めることができ、次の学びへの姿勢に繋げることができました。共催いただいた組織の皆さま、どうもありがとうございました。 (Climate Youth Japan 長谷川)
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